『”四国遍路”は単なるお寺巡りではない』——四国遍路で地域創生をする理由とは?ー株式会社四国遍路 代表取締役 佐藤崇裕ー
樋口ありさ

皆さんは「四国遍路」に関して説明できるだろうか?四国遍路とは真言宗の開祖である弘法大師空海が四国で修行をしたゆかりの地を巡ることを指し、中でも「四国八十八ヶ所霊場」のお寺(札所)を巡礼することが有名だ。室町時代までは僧侶が修行のために行うものとされ、江戸時代から庶民もご利益を求めて巡拝するようになったと伝わっている。

そんな「四国遍路」や四国旅行にまつわる情報発信やツアーの提案に携わる「株式会社四国遍路」代表取締役の佐藤崇裕さん。香川県出身であり大学進学を機に上京するも「魅力はあるが寂れていく地方を活性化させたい」という思いで創業した。

佐藤さんは「四国遍路は単なるお寺巡りではなく、地域活性化の鍵となる可能性がある」という ——。その理由とは何なのか、地域創生に携わる佐藤さんに語っていただく。

四国遍路と地域活性化を接続する

—— 本日は佐藤さんが携わる株式会社四国遍路の事業についてお聞きしたいと思っています。
佐藤さん:一言でいうと、四国専門の旅行会社です。四国を旅行する人に四国をいかに楽しんでもらえるかに特化して旅行サービスを提供しています。

特に力を入れているのは「四国遍路」に関する情報発信をするWebサイトの運営。四国遍路の基礎知識や巡り方など初心者が足を踏み入れやすいような情報から、知る人ぞ知る専門的な情報までを、調査・取材して掲載しています。


—— なぜ「四国遍路」に注目したのですか?
佐藤さん:きっかけは、創業する前に2ヶ月間四国遍路を体験したことでした。
出身地である香川県を含めて地方で過疎化が進む一方で、伝統文化や特産物などその地域だけしかない魅力があるとも感じていました。

それを活かすことで地域を活性化させたい。
思いはあったものの具体的に何をするか決まっていませんでした。そこで自分と四国を見つめなおすために四国遍路をしたんです。

始めてみると、自然や食文化など様々な観点から四国の中でもいろいろな地域それぞれの個性が光っていることに気づきました。

特にわかりやすかったのは海の景色です。愛媛県や香川県が接する瀬戸内海は、陸地に囲まれた海であることもあり波が穏やかでした。対するのは、高知県や徳島県が面する激しい波が打ち寄せる太平洋。

同じように食べ物や味付けなどにも地域ごとに特色があり、地元の香川県に関しても知らなかった魅力が沢山あることに気づいたんです。
自分自身の体験が四国遍路をテーマにしたビジネスを立ち上げるきっかけとなりました。


—— 四国巡りを通して地域の魅力を再発見したことが、四国遍路をメインに扱う決め手だったと。
佐藤さん:自分自身が発見した四国や四国遍路の魅力をいろいろな人に知ってもらえたら良いなと思いました。

また四国遍路が地域のコミュニティ的存在であることもビジネス化する大きな要因でした。

具体的に言うと、地元住民によるお遍路さん(お遍路をする人)のために行う活動があるんです。
 
たとえば、お遍路さんが安心して巡礼できるように遍路道を整備したり、その道の周りに飲食店や宿ができたり。

他にも「お接待」といって、過酷な旅をするお遍路さんのために、お菓子や飲み物を無償で施す文化など、昔から続くお遍路さんと関係する地域文化が、形は変化しながらも今でも残っています。

四国遍路は単なるお寺巡りではないんです。
だからこそ、お遍路さん(お遍路をする人)を呼び込むことができれば、四国各地の地域も潤うのではないか。

四国遍路を通じて、人と人の接点ができ、お金も循環していくようなビジネス的な動きをつくっていくことで、四国遍路の文化を発展させることにもつながると思いますし、四国各地が盛り上がるのではないかと考えています。

コロナ禍での地域創生

——現在コロナウィルスの影響で旅行業界が打撃を受けているニュースをよく見かけます。四国遍路にも影響が及んだのでは?
佐藤さん:影響はありました。現状の四国遍路の主な客層である年配の方は、感染予防の観点で外出するのを控える傾向があります。し、加えてコロナ禍前に増加していた国外から四国を訪れる外国人お遍路さんがはほとんどいなくなってしまい、お遍路さんが激減しました。

それはする側のみならず、受け入れる側も同じでした。感染防止の観点からお寺や宿が受け入れを停止したり、お遍路さんが少なくなったことで休業・廃業に追い込まれる飲食店や小規模宿もでてきています。

感染症が早期に収束し、四国を訪れる人がまた増えることを願うばかりですが、そのときに受け入れ体制が十分に整っているかは不安視しています。

——やはり大きな影響が出ているんですね...。四国遍路が止まるとなると身動きが取れないように思えるのですが、会社としてどのような活動をされているのですか?

佐藤さん:現在は、アフターコロナに向けて新しい旅行プランの開発や観光開発のコンサルタントとしての活動がメインになっています。

行政から業務委託を受けて、ツアーを発案しモニターに体験してもらって改善する。

コロナが終わったら、もう一度観光客を呼べるように動いています。

その傍ら、観光開発コンサルタントとして四国内の事業者と協力して、特産品や観光名所などの地域資源を活かして地域を活性化させる方法を考えています。

——コンサルタントとして現在関わっている活動があればお聞きしたいです。

佐藤さん:「Naruto Sake Story 鳴門酒蔵街道」というプロジェクトに約2年間携わっています。

徳島県の鳴門市で200年以上の歴史を持つ老舗酒造「酒蔵鳴門鯛」を中心に、その周辺にある醤油蔵や寺院などを含めたエリア全体を盛り上げていく活動です。

酒蔵があるエリアには、先代から産業を受け継ぎ地域に思いを持っている多くの事業者がいます。
しかし、認知や集客が十分に行き届いていない状態です。

だからこそ、その価値を大切にしながらより活性化させたい。
少しずつではありますが、日本だけでなく世界からも注目されるような場所にしていきたいです。

画一化した巡り方に多様性を


—— 今後、佐藤さんが取り組みたいことをお聞きしたいです。

佐藤さん:四国遍路の新しいスタイルを作りたいと考えています。
昭和から平成初期の四国遍路は、旅行会社が提供するバスツアーに集団で参加し効率よくお寺を廻る画一化された形で参加する人が大部分でした。

しかし最近は、自家用車を使って家族や夫婦など個人単位で、自由に自分のペースで四国遍路をするスタイルなど、団体ではないスタイルに変化しています。その動きはコロナの影響でますます加速し、今後は主流になるでしょう。

お遍路も、組織の時代ではなく個人の時代に変化しているんです。
お遍路さんのニーズも多様化してきている中で、ただお寺を巡るだけでなくバラエティに富んだ楽しみ方を提案したいと考えています。

—— 最後に読者に向けて一言お願いします。
佐藤さん:まずは気軽に四国遍路を始めてほしい。

四国遍路は一度始めたら四国一周全てを廻らなければいけないという固定観念を持っている人が多いと感じています。

確かに巡り方の1つのスタイルではあるけれども、少しずつ何回にもわけて何年もかけて廻る人もいますし、特定の地域だけを廻るのも四国遍路にかわりありません。

全てを廻ることにこだわるよりも、興味がわいたらその時に少しからでも足を踏み入れて気軽に体験してみて欲しいです。

—— 本日はお時間頂きありがとうございました。

企業名

株式会社四国遍路

所在地

〒761-0701 香川県木田郡三木町大字池戸191番地

代表者

佐藤崇裕

事業内容

旅行業法に基づく旅行業及びその代理業

WEBサイト

https://shikokuhenro.co.jp/

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