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こんにちは!春の陽気に誘われてそよ風のなか散歩することが大好き、駆け出しの学生ライター、友近史歩(ともちか・しほ)です。
今回ご紹介するのは、岐阜県本巣市・根尾谷に静かにたたずむ1本の老桜 「根尾谷淡墨桜(うすずみざくら)」。
薄いピンクの蕾が、満開になれば白に、そして散り際は独特の淡い墨色へ変化する…その姿は、ただ美しいという言葉だけでは語りつくせません…。
咲きはじめ・満開・散り際と3段階の表情をもつ淡墨桜の色の変化にぜひ注目してみてください!
本記事では、淡墨桜の幻想的な美しさの裏に息づく伝説と、何度も枯死の危機を乗り越えてきた再生の物語をお届けします。
最後まで楽しんで読んでいただけると、うれしいです!
天皇が植えたとされる、別れと祈りの桜
淡墨桜には、第26代継体(けいたい)天皇がまだ皇子だったころに植えたとされる伝承が残されています。
時は1500年前。継体天皇は、美濃(現在の岐阜県)で、身を隠すように育てられていました。やがて都へ招かれ美濃の根尾谷を去ることになった際、育ててくれた人々へ感謝の意を込めて桜を植え、一首の歌を詠んだといわれています。
身の代と遺す桜は薄住よ千代にその名を栄盛へ止むる
(わが身の代わりに桜を託し、その名前が永遠に語り継がれ、人々に愛されることを願う)
この歌と苗木が、現在まで根尾谷に咲き続けている淡墨桜の起源とされています。
人々の記憶と感謝の心を託されたこの桜は、まさに歴史とともに生きる花といえるでしょう。
淡墨桜の近くにはこの伝承にちなんだ歌碑があります。ぜひ1500年前の別れの情景を想像してみてください!
枯死寸前からの奇跡、根接ぎがつないだ命
淡墨桜が最初に衰えを見せたのは、大正初期のこと。大雪によって太さ約4メートルの枝が折れ、本幹に亀裂が入りました。
村人たちは保護に努めましたが、昭和23年、国の調査で「3年以内に枯死する恐れあり」と判断されてしまいます。
美しい桜が見れなくなるなんて…胸が締め付けられるような寂しさを感じます…。
そこで立ち上がったのが、岐阜市の医師・前田利行でした。
前田氏は、医師として働く傍ら、盆栽が趣味で独学で接木などの木の再生技術を開発しており、老木再生の名手としても知られていました。そして、淡墨桜が枯死寸前の危機にあるということを知ると、直ちに現地を訪れて淡墨桜の状態を調査を開始します。
本幹周囲の土壌を掘り起こして調査をしてみると、なんと根の部分にシロアリが生息しており、これにより根はすでにほとんど枯死状態であることが分かったのです。前田氏は、淡墨桜を再生するために、わずかに活力のある根に山桜の若根を接ぎ木する「根接ぎ」を行いました。
この治療により、淡墨桜は驚くほどの勢いで回復。満開の花を咲かせた姿に、人々は歓喜し、老木に再び命が宿った奇跡を見届けました。
淡墨桜に近づいて観察すると、支柱や保護の跡が今も残っており、それらに目を向ければ桜を守ってきた人々の努力が見えてくるはずです。
言葉が救った老桜、もう一つの再生の物語
しかし淡墨桜にとっての試練は、それだけではありませんでした。
昭和34年の伊勢湾台風で、枝の多くが折れ、樹勢も衰えるという大きな被害にあってしまいます。村の人々は支柱を増やし、肥料にも気を配っていましたが、回復は思うように進みませんでした。
そのなかで、昭和42年に作家・宇野千代が村を訪れ、侘しく立っている淡墨桜の痛々しい姿に心を打たれ、雑誌『太陽』で桜の現状を伝えたり、岐阜県知事に書簡を送ったりといった活動を行い、淡墨桜の保護を強く訴えました。
宇野氏のたとえ小さな力でも淡墨桜を守ろうと努力した姿に、多くの人々が勇気づけられたのですね。
これをきっかけに、淡墨桜を守ろうという動きが活発化し、柵の拡張による根の保護・カビの除去・支柱の追加・大量の施肥など技術的な対策が次々に実施されました。
また、国や県からの補助金も導入され、保護体制は一層強化されていきます。
深い緑を背景に、堂々と佇む一本の淡墨桜。その姿は孤独というより、多くの人々のあたたかな愛情に包まれているのだと思うと、あたたかい気持ちになりますね…。
どこで会えるの?淡墨桜への道案内
1500年の時を越えて今もなお咲き誇る淡墨桜。実際にその姿に出会いたくなった方へ、アクセス情報をご案内します!
訪れる季節や時間によって、淡墨桜のたたずまいは微妙な違いがあります。たとえば早朝や夕暮れ時のわらかい光に包まれた淡墨桜は、写真では伝えきれない幻想的な表情を見せてくれます。
ぜひ、自分だけの「とっておきの一瞬」を見つけてみてください!
📌淡墨公園(淡墨桜)
・📍岐阜県本巣市根尾板所字上段995
・🚶樽見鉄道 樽見駅から 徒歩約15分
・🚙東海環状自動車道 大野神戸ICから 車で約40分
東海環状自動車道 山県ICから 車で約40分
駐車場あり(700台)
・📆常時開放・無休
・📞0581-34-3988(本巣市観光協会)
おわりに
いかがでしたか?
根尾谷淡墨桜は、皇子の感謝と祈りが込められたという伝説と、幾度も絶えかけた命をつなぐ人々の愛と努力に支えられ、力強く咲き続けています。
今では、山梨県の山高神代桜・福島県の三春滝桜と並び、日本三大桜のひとつに数えられ、国の天然記念物にも指定されています。
もし春のある日、あなたがこの桜の下に立つことがあれば、そこに吹く風の音や、花びらが散る気配のなか、1500年の物語と誰かの願いがふと聞こえてくるかもしれません…。
観光だけでなく、対話として岐阜・根尾谷淡墨桜を訪れるのはいかがでしょうか。
参考
・岐阜の旅ガイド|根尾谷淡墨桜
・日本イベント企画株式会社|淡墨桜
・本巣市|根尾谷淡墨桜 伝説
・東植田コミュニティ|④薄墨桜と継体天皇の歌碑
・本巣市|根尾谷淡墨桜 再生保護
・本巣市|根尾谷淡墨桜 アクセス
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